「主治医が見つかる診療所」(毎週木曜夜7時58分から)は、医師や病院の選び方のコツや無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちが答える、知的エンターテイメントバラエティ。
今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」に寄せられたのは、長引く症状が気になる体のこわばりと、鼻の症状についての質問です。早速、同番組のレギュラー・中山久德医師に相談してみましょう!
Q:30代女性です。以前から朝起きると手がこわばり、体の節々に痛みがあります。しばらくすると動ける程度に回復するので、「朝だから」「寒いから」と気にしないようにしていましたが、長年祖母が「リウマチ」を患っていることもあり、だんだん不安になってきました。この年齢でリウマチを発症することはありますか。また早めに治療すれば進行を抑えることはできますか。
―― リウマチとはどんな病気ですか。30代でもなることがあるのでしょうか。
「関節リウマチというと、ある程度年齢を重ねた方の病気と思われがちですが、30歳代で発症することも十分あります。最も関節リウマチになりやすいのは40歳代で、その前後の30~50歳代が好発年齢です。男女比はおよそ1:4であり女性に起こりやすい病気なので、30歳代の女性でなんらかの関節の症状が現れたら、関節リウマチも疑うことも考えてもいいですね。
関節リウマチの症状としてまず現れやすいのは手のこわばりと関節痛です。朝起きた後に生じることが多く、手が開きにくくなったり、閉じにくくなったりするため、例えば包丁がうまく握れない、離しにくいなど朝の家事や身支度に支障が出たりします。関節の痛みは初めは1か所ぐらいから始まって徐々に広がり、進行すると複数の関節、しかも左右に症状が及びます。この左右対称に症状が出るのが、関節リウマチの典型例。だからといって、片側だけが痛い=関節リウマチではないということではありません。関節リウマチの初期だからそこだけにとどまっているという可能性もありますので、疑わしいと思ったら専門医に診てもらうことをおすすめします」
―― この相談者の場合、ご家族に関節リウマチの方がいるようですが、遺伝したりするのでしょうか。
「遺伝要因もあります。関節リウマチは、いまだ"これが原因"と限定されるものがなく、複数の要因が重なって起こる病気と考えられています。そのうちの一つが遺伝です。この方のように祖母が関節リウマチなら"リウマチのなりやすさ"を受け継いでいる可能性はありますが、必ず発症してしまうというわけではないのです。現在のところ、喫煙、歯周病のある人は関節リウマチを発症しやすいことがわかっているので、それらが重なることでさらに関節リウマチになるリスクが高まると考えたほうがいいですね。
また、今は亡くなっている高齢だった血縁者にリウマチの人がいたと聞いている場合、それが関節リウマチを指しているのかは怪しいです。昔は関節が痛む病気を、すべてリウマチと呼んでいたんですね。関節リウマチは背景に免疫の異常があります。本来は外敵から身を守るべき免疫が自分自身を攻撃してしまう病気(自己免疫疾患といいます)。これとは異なり、加齢によって軟骨がすり減り、関節の節々が痛む変形性関節症も以前はリウマチと言われることもありました。女性ですと、閉経後に多くの人がしばしば関節の痛みを訴えますよね。これら原因がわからない関節の痛みをひっくるめてリウマチと呼んでいたので、昔にリウマチと言われていた人は関節リウマチではない可能性があります」
―― 関節リウマチと変形性関節症の痛みを見分けるのは難しいと思いますが、わかりやすい違いはありますか。
「同じ指の関節が痛いという症状であっても、どの関節に痛みがあるのかによって、おおよそ関節リウマチかそうでないものかがわかります。特に人さし指から小指にかけての第1関節が曲がってしまって、骨ばって腫れて痛い人は、関節リウマチの可能性がかなり低いですね。関節リウマチの場合、第1関節に症状が現れることは稀なんです。ほとんどはへバーデン結節と呼ばれる変形性関節症と考えていいでしょう。第2関節になると、関節リウマチでも変形性関節症(ブシャール結節)でも起こってくる。指の付け根の第3関節(親指の場合は第2関節)の痛みなら、関節リウマチを考えやすくなります」
―― 関節リウマチの症状は、必ず手指から現れて全身に広がるのでしょうか。発症しても進行を抑えることはできるのでしょうか。
「関節リウマチは小さい関節から障害されることが多いので、手の指や足の指の関節から発症しやすいといわれています。一方で年齢が高くなると膝や肘、肩など大きな関節から起こってくることもしばしばあります。
関節リウマチというと、関節が曲がって動けなくなり、いずれ寝たきりになるというイメージを持つ人も多いですよね。でも今は診断技術も進み、優れた治療薬も開発されているので、早い段階で関節リウマチと診断し、適切な治療を早期に開始すれば、免疫異常による炎症を抑えて関節の破壊を食い止めることが十分に可能です。関節に障害を残すことなく日常生活を送れる人がほとんどですね。
ちなみに、関節リウマチかどうかは関節症状の他に血液検査と画像検査でおおよそわかります。血液検査では免疫異常の有無と、炎症の程度を調べます。さらに関節が実際にどのようになっているかを診るために、レントゲン検査で関節破壊の有無を調べます。すでに骨の破壊が認められてしまうと、すでに関節リウマチはかなり進んでいる状態なんですね。発症早期の関節の炎症を見るには超音波検査やMRI検査が有用です。
関節リウマチは、残念ながら生活習慣の改善のみでよくなる病気ではありません。壊れた関節を元に戻すことはできないので、心配ならば様子を見るよりも早めに専門医のいる医療機関を受診することが大事ですよ」